少し前に新型コロナウイルス感染症拡大の影響で東京都内のタクシー会社が全乗務員を解雇したというニュースが波紋を呼んでいます。
解雇そのものも衝撃的だったが、朝日新聞の報道によると、同社は解雇した従業員を感染症終息後に再雇用する方針を示したという。
東京労働局は、失業給付の要件を満たしていないとの見解で、
「雇用保険の受給資格を有する方の定義は、現に元の会社と雇用に関する契約が完全に失効していて
『積極的に求職活動をし、いつでも就職可能』な環境にある方を指します。元の会社に早期に戻ることが約束された状態では、
そもそもこの受給資格を満たしていないとのこと。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大による雇用への影響が統計的にも鮮明になってきました。
厚生労働省が4月28日発表した3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.39倍で前月から0.06ポイント下がりました。
2016年9月以来、3年半ぶりの低い水準となりました。
雇用の先行指標となる新規求人は前年同月比で12.1%減りました。
減少幅は製造業が22.8%、宿泊・飲食サービス業は19.9%、職業紹介・労働者派遣業は34.3%と特に大きかったそうです。
厚労省は新型コロナに関連した解雇や雇い止めにあった人数(見込みを含む)が4月27日時点で3391人だったことも明らかにしました。
3月30日時点では1021人で、ほぼ1カ月で約2000人増えました。
東日本大震災では「災害時の特例として措置」を実施
国は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の際、「災害時における雇用保険の特例措置」を取りました。
災害により休業を余儀なくされたケースや、一時的に離職を余儀なくされた被災者は、雇用保険の失業手当を受給できる仕組みだった。
当時、厚生労働省が発表した文書では、特例措置を以下のように説明していた。
「事業所が災害を受けたことにより休止・廃止したために、休業を余儀なくされ、
賃金を受けることができない方については、実際に離職していなくとも失業給付(雇用保険の基本手当)を受給することができます。
災害救助法の指定地域にある事業所が、災害により事業を休止・廃止したために、一時的に離職を余儀なくされた方については、
事業再開後の再雇用が予定されている場合であっても、失業給付を受給できます」
このよう記事が記憶を呼び起こしてくれました。
そう、東日本大震災時には、天井が崩れ落ちた介護施設でこの特例措置を施設職員の皆様に説明したことを思い出しました。
職員は、物資等は大変であったが失業給付のお陰で被災生活を乗り越えることができたと後に制度を評価しています。
当時の施設長も新施設の再建に向けて設計会社と熱い議論を交わし、短期間で新施設を完成させ、多くのご利用者と職員が再会を果たしました。
新型コロナウイルスの企業活動への休業要請の長期化が懸念される中、いつ終息するのかわからず、
多くの従業員は不安に駆られ中失業給付の給付は社会のセーフティとして生活に安心材料を与えられるものだと思います。
まして、国家全体でStay Homeを実施しなければいけません。事業者において雇用調整助成金が用意されているものの
税や社会保険の負担は大きく雇用保険の特例措置は有意義であるはずです。
せめて、特定警戒都道府県における地域の事業者や休業を要請した業種等においてだけでも特例化することは
事業者の精神的負担と労働者に安心感を与えることができるはずです。
多くの弁護士の方々も、災害対策基本法第2条1項1号が定める「異常な自然現象」と解することは十分だと、
新型コロナウイルス感染症の拡大を災害対策基本法の「災害」に認定するなどの弾力的運用あるいは制度転用を行い、
災害対策基本法をはじめ、災害時の各法制度を活用することを緊急に提言しています。
https://hitorihitori.jp/archives/444
現在、政府が方針を示している雇用調整助成金の上限等休業手当に対する議論は日に日に激しくなる一方ですが、
まさに特例措置の実施こそ、今、求められているのではないでしょうか。